FC2ブログ

5年目の新入り

(この記事は2015年5月16日に書いたものを一部加筆修正したものです。)

 思わぬ形で連休中臨時収入が入った。
1年前の自分なら無意味な散財で使い潰したかもしれない。 
だが、今の僕には欲しいものがなかった。 それはそれで悲しいものだ。物欲がないというのは心が枯れているということだ。 そんなのは嫌だと強いて欲しいものを探った結果、僕はヘッドホンを買うことにした。

 僕のヘッドホンは5年前に購入したCD900STが未だに現役だ。 これに対する不満はほぼない。圧倒的解像度には本当に驚かされる。解像度に限って言うならA8など敵ではない。  
何より5年の苦楽を共にしてきた相棒である。
音楽を聞く時はもちろん、動画制作、ゲームをプレイする際にも使用し、常に圧倒的臨場感と正確性のあるサウンドを耳元に届けてくれた。 最高のヘッドホンだ。

 無論まだ手放す気はなく、今後も活躍してもらおうと思っている。  
そもそも不満があるなら、5年も経つ前に他のヘッドホン探しを始めているはずである。それをする気が全く起こらないほどにCD900STに満足していたということだ。 
さらに言うなら、今回の追加購入も金の使いどころが無かったから行っただけであり、それがなければ今後もCD900STオンリーで通したことだろう。  


 さてでは、そんな最高の相棒とはっきり断言できるくらいのCD900STを持っていてもなお、新たに買ってみようかと思わせるヘッドホンとは一体何か。 
ヘッドホンについて調べていると、だいたい名機とされているものは何度となく話題に登場し、自然と名前を覚えるものだ。 

 それは数々の伝説や逸話をつくり、多くの著名人に使われ、機能美から生まれる優れたデザインを持っていて、熱烈なファンを生み出す固有のサウンドを持ち、ロングセラーとなっている。 
...というウンチクをファンに語らせるのである。
  私は実のところはそんなに肥えた耳を持っているわけでも、高品質なサウンドシステムを持っているわけでもない。なのでその使っている道具に満足できるかどうかは、如何にその道具に語れるだけの物語とステータスがあるかどうかにかかっているのだ。

 かつてCD900STを購入したのもそういう理由だ。そしてかつてCD900STと同じくらい欲しくて憧れていたが、CD900STより一回り高額な値段から断念したものがあった。それが今回購入したヘッドホンだ。
DSC_1044.jpg 
 そう、それはゼンハイザーHD25だ。  

 かつてCD900STを買い、EC700を買い、A8を買うくらいまでの僕はヘッドホン関係の情報を自己満足のために漁りまわっていた自分は当然やっぱりHD25のことも調べていた。 だからそのときに溜め込んでいたウンチクをここで記しておこう。 

 「それまで世の中には"密閉式"のヘッドホンしかなく、着けてると蒸れて耳が痛くなるというのがヘッドホンの常識であった。 
そんな中鳴り物入りで登場したのがゼンハイザーのHD414という機種。
 白いプラスチックのちんけなボディに青いただのスポンジのイヤーパッドという、鮮烈なビジュアル。 
そして何より世界初の"開放型"ヘッドホンであった414は、その軽快な装着感とサウンドでも人々を驚かせ、それまでの不快で面倒な物というヘッドホンのイメージを根底から覆した。 
その後HD414のカラーはブラックに変更され、イヤーパッドも黄色いものに置き換わった。
 プロの現場の音響機器として、そしてその鮮烈なビジュアルはファッションアイテムとして、多くの著名人に愛されたHD414は、一部の若者たちの憧れのヘッドホンであったのだった。」 

 完全にHD414のウンチクになってしまった。 だがHD414の話をしたのには理由がある。それはこのヘッドホンの後継が何を隠そうHD25なのだ。

 前フリはここくらいにしておこう。(相変わらず長い前フリだ) 
ではここで、HD25の実際の外見について述べていこう。 HD414の後継らしく、外見は恐ろしく簡素。
黒一色のプラスチックでできており、おもちゃのようだ。
「100均で買ってきた」と言っても、知らない人には通用するだろう。 
そういう意味では世の殿方が嫁に内緒で買ってバレても言い訳がしやすい機種といえる。 
正直その質感のチープさは想像を超えていたが、質実剛健で無骨な外観はCD900STに通ずるものがあり、さすが似たようなジャンルのヘッドホンである。
とはいえその質感はCD900STには遠く及ばない。CD900STのことは今まで「機能性のために外観は捨てたヘッドホン」と思っていたのだが、HD25に比べたらまだまだちゃんとデザインしてるなと思える。 
HD25も質感は残念だが作りはさすがにしっかりとしており、良く見ると安物ではないということが分かる。 
この感覚は、トイカメラのくせに普通のコンパクトカメラ並の値段がして、実際写りも秀逸なカメラ、Lomo LC-Aを髣髴とさせた。 

 そういった外見についてはある程度了承済みだったのだが、実物を見て「はてな?」と思った部分があった。 それはバンド部分の印字だ。 
僕の記憶ではここにはメーカーロゴと、その下に「MADE IN IRELAND」の印字があったと思ったのだが、ぼくの元に届いたHD25には「SENNHEISER」としか書いてなかった。
 調べてみて理由が分かった。 僕が買ったのは「Basic Edition」というもので、HD25からスペアのイヤーパッドとキャリングポーチを省いて値段を安くしたものらしいのだ。 
そんなものはいらないのでその分安くなることは大変結構なのだが、デザインまで変えてしまう必要があったのかと思う。

  ただ、このエディションは国内販売されておらず購入するには代理店から輸入品を買うか自分で輸入して買うしかない。見方を変えればレアな代物を手に出来たとも言えるかもしれない。 
HD25はプロ向け製品なので、部品単位で販売されている。 件のヘッドバンドに関しても、アイルランド製と書いてあるオリジナルバージョンの方がちゃんと売られており、どうしても納得できないならそれだけ買って交換することも可能である。

  だが驚かされたのはその値段だ。 何と、たかがプラスチック製のバンドひとつに10000円もの値がつけられていた。 
あまりにバカげた値段である。破損したならまだしも、ロゴの差異だけのために出す額じゃあない。これならカッティングシートなどでロゴだけ自作する程度にとどめておくのが賢明というものだろう。 
などと考えていたらどうでも良くなってきた。とりあえずこのまま使い続けて、それでも気になるようだったらそのときにでも換えよう。 
ちなみにBasicEditionと通常版の差はそのヘアバンドだけで、それ以外の見た限り全く同一のようだ。  

 装着感は、まずCD900STと比べるとその外圧の強さに驚く。 だが、重量も軽いのでしっかりとポジションを調整すればさほど不快なわけでもない。
ドライバが小さく、CD900STのように耳全体を覆うのではなく、耳の上に乗るような形なので意外と蒸れることも避けられるかもしれない。ここらへんはもう少し使い続けてみないと分からないが。 形式は密閉型に変わってしまったものの、ここらへんの軽快感は祖先のHD414の潮流を受け継いでいる感じがしないでもない。 
上で散々ロゴの違いについてグチグチと述べたヘアバンドに関しては、真ん中でふたつにわかれてあらゆる頭の大きさの人でも安定して装着できるという特徴的な機構になっており、この機種のデザイン上の特長にもなっている。 
だが自分で装着して見た限りでは、その強力な外圧のおかげでドライバ部分だけで結構しっかり保持できてしまうので、この機構の意味はあまりないのではないかと感じる。  

 さて最後は肝心の音質だ。 とはいってもまだ購入直後でエージングもされてないので本来の実力も発揮されてないだろうし、何より僕は専門的なことは全く分からない。 あくまで自分の主観で、現時点で自分が感じたCD900STとの差異について記しておく。 
とりあえずこれで音楽を聴くと、ボーカルの音が明瞭で、まるで耳元で囁いてもらっているかのようである。
加えて低音が力強く自己主張してくるので、どの音楽も総じて没入感が上がる感じである。 CD900STは全ての音域が平等にすごい解像度で耳に飛び込んでくるので、それと比べると僅かだが音が調整されてうまく演出されてるなと感じる。
高・中域の美しさで魅了するA8とも全く違うキャラクターで、差があるのが面白い。 
と、ここまで分かったようなことを書いてしまったが、最初にHD25で聴いてこう思い「期待以上の素晴らしいサウンドだ!」と満足した後にCD900STで聴き比べてみると「あれ?やっぱCD900STも充分素晴らしい音だなあ」って思えて結局どれも変わらんかなあって思ってしまったりしたのだった。 
ようするにCD900ST、HD25、A8、総じてどれも素晴らしく、それぞれが一定レベル以上に達しているということなのだろう。その上での個々のプラスアルファは僅かであり、恐ろしくハイレベルな戦いなのだ。  
オーディオなんて自己満足以外の何物でもない。 「こういう音の傾向」と自分が思ってもそれを他人に伝える手段はない。文章などで現したところで別の人が聴けば全く違う感想を抱くかもしれない。
なので思い込むのである。「このヘッドホンはこういういきさつで生まれ、こういう構造をしていて、こういう評価をされてきている。だからこういう音なんだ」と。 
そのウンチクの最後のスパイスとして自分で実際に感じた印象を加えればいいのだ。
自分が聴くときに満足できればそれでいいのである。 

 そういう観点でいくと今回HD25を買ったのは正解だった。 ぼくはこのチープで無骨な外観が好きだし、軽量コンパクトで取り回しもしやすい。サウンドもとても気持ちよく聴き入るキャラクターだ(と僕は感じている)。何と言ってもオーディオ界の老舗、ゼンハイザーで名機と呼ばれている機種である。 この文句はスパイスとしては最高のものだろう。 そういうわけで、きっとこのHD25ともCD900ST同様、長い付き合いになるのではないかと思う。

(以下は更新日に追記。)
 HD25を購入して4年経つ。
なぜ購入直後に書いたこの記事を今さら引っ張り出してきたかというと、今日ふと自分のパソコンの上に置かれているHD25の姿を見て、この記事のことを思い出したからである。
そう、HD25は今も私の手元で元気に働いてくれている。

 ちなみにこのとき名を挙げていた他のヘッドホンたちだが、CD900STは売却してしまった。
理由は高級ヘッドホンに興味がなくなったので、音を聞く道具としてなら一台あればいいだろうとHD25だけを残したのだった。

 私の耳と手元の環境ではCD900STとHD25とだと、明らかにどちらの方が音質が優れているというほどの明確な差は見いだせなかった。
強いて言うならモニターヘッドホンとして本当に音のデータを正確に出力してる印象のあるCD900STと比べると、HD25は同じモニターヘッドホンながらまだ少し音楽として楽しませようという意識を感じる。

 一方道具としての実用性では明確な差があった。
CD900STのケーブルは太い上に恐ろしく長い。おまけに装着プラグがステレオプラグなので、身近なヘッドホンジャックに接続するには変換プラグが必要で、これらを合わせると取り回しが酷く面倒だった。
一方HD25はまっとうなケーブルの太さと長さでかつステレオミニプラグなのではるかに使いやすかった。ついでにL字プラグなのも高ポイント。
これらの理由から手元に残したのはHD25にした。

 ちなみにA8は手元にあるがほとんど使用していない。
このブログ上に書いているかどうか分からないが今手持ちのA8はヤフオクで中古で購入した2代目である。
だがこの2代目も1年くらい前に断線してしまった。
その後すぐに修理を行ったが、使用したヘッドホンジャックが悪かったのか配線のせいなのか、接触がシビアになってしまい、ズボンのポケットの機器と接続したまま歩いたりするとしょっちゅう音が途切れるようになって酷く使いづらくなってしまった。こうなると外出先でほとんど使用できない。
家の中ではヘッドホンを使えばいいので、自動的に使用頻度は極端に減少した。

 このイヤホンを使わなくなった理由は他にある。
それは、外出時に使用するイヤホンが完全にワイヤレスイヤホンに置き換わってしまったためである。
4年の時の経過はイヤホンというものを飛躍的に進化させてしまったのだ。
当然使い勝手の面で有線イヤホンがワイヤレスイヤホンに勝る部分はほとんどない。

 唯一A8がワイヤレスイヤホンに勝っている部分は音質のみだが、悲しいかな私がイヤホンで聞くものも主にラジオになったので音質の良さも不要になってしまった。
 そしてそのA8の音質に関しては、イヤホンの中ではもちろん優れている方だが、改めてHD25と聴き比べると解像度の次元が違った。
A8をまず聴くとその音色は感動できるレベルなのだが、その後にHD25で同じ曲を聴くとぶったまげる。何曲か連続で聴いている途中にA8からHD25に切り替えたりするとさっきA8で聴いていた区間を失礼ながらもったいないとすら思ってしまうレベルの違いなのだ。
例えるなら高校の県大会でスタープレーヤーだった奴の目の前に突然世界トップクラスのプロ選手が現れて圧倒的差を見せつけられた感じだ。

 そんなわけであんなに自分の中で理想のイヤホンだと思っていたA8に今はびっくりするほど思い入れはなくなっている。
一度ヤフオクで売ることを試みたが、売れる気配がないので出品を止めた。
ワイヤレスイヤホンが主流になりつつある昨今ではこの名機の需要ももうないのかもしれない。
少し寂しくなる経過だが、A8は今も手元にある理由はそんな訳だ。


 記事は購入直後の感想なので実際使ってみての感想は自分の記憶以上に書いてなかったので、激しく今更ながら思ったことを書いておく。

 まず上にチラと書いてるが音質に関しては本当に一流。
音を正確に出力してくれる解像度に加えて、(CD900STと比べると)音楽を楽しませてくれる鳴り方をしてくれるので、リラックスするために音楽を聴くときはもちろん、初めて触れる曲を聴く、ちょっと聴いてこれはちゃんと聴きたい曲だと思ったときにはHD25を使うようにしている。
それくらい音質には全幅の信頼を置いている。

 そんなに使用頻度が高くないせいもあるが、4年の時を経ても多少の傷がついただけで故障などは一切ない。
ただ小さな問題は一度起こった。
 2年ほど前に出先で使用している際、突然ヘッドバンドが分解してしまったのだ。
HD25の特徴的な機構である「2本ヘッドバンド」はネジで固定されているのだが、これがヘッドバンドの角度を変える度に緩んできてしまう。
以前から気になっていたのだが、そしてよりによって外出先でそれが完全に緩んで外れてしまったようである。
その時は急いでいたために転がったネジを探すこともできず結局紛失してしまった。
仕方なくホームセンターで適当なネジを見繕って装着したところ、純正のネジのように緩むこともなく皮肉にも使い勝手が向上する結果になった。
 だが問題らしい問題といえばこの程度で、ヘッドホンの本命である配線関係に断線などは一切発生していないため、耐久性もさすがプロ用といった感じである。

 さらに驚くべきは、樹脂のしなりを用いた強靭な外圧は4年間使い続けても全く緩む気配はない。
頭に装着した直後は開いているが、数分経つとハウジング同士の距離は触れ合わんばかりの新品の位置にまで戻っている。
この外圧のおかげで遮音性はCD900STよりかなり高い。装着した状態で音楽を流せば、外界からはほぼ完全に遮断され、作業時に使用すると良い感じに没頭できる。
ただ問題は装着感だ。小さめのハウジングを耳に押さえつけるので、長時間装着していると確実に耳が痛くなる。
もっと聴きたいと思っていても耳の痛みが我慢できずに使用を中止するということも割とある。

 そういった難点があったり、最近は音楽を聴く機会も減って使用頻度もめっきり減ったりしても、手放す気は不思議と全く起きない。
例え普段はワイヤレスイヤホンを使っていても、いざちゃんと「音楽を聴くぞ」という時にはやはりHD25が活躍する。自分の中で音楽に触れる時の「音質の基準」になってくれている。
良い物というのはただ手元にあるというだけで安心感を生んでくれるのかもしれないと、今日HD25を見て改めて思った次第である。
関連記事
スポンサーサイト

tag : ゼンハイザー Sennheiser HD25

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Kinnan

Author:Kinnan
基本的に車と写真が好きです。
よろしくお願いします。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード